2012年5月30日水曜日
アローズA2/リカルド・パトレーゼ/1979/ミニチャンプス
アローズA2は個人的にかなり好きなマシンです。理由は単純。他のどんなマシンにも似ていないから。
1978年のロータス79の大成功の後、各チームはさまざまなアプローチでグランドエフェクトカーを投入します。そんななか、満を持して登場したのがア ローズA2。ロータスの復活に関わり、シャドウにも初優勝をもたらしたデザイナー、トニー・サウスゲートの手によるこのマシンは、本当にユニークなボディ を持っていました。
「人間魚雷“回天”を連想させるユニークなシェイプ」
これはオートスポーツ1979年9-1号の巻頭グラビアのキャプション。改めて「回天」でググってみましたが、先端が丸みを帯びているのが、両者の共通点ですね。
A2が初めてレースに参戦したのはフランスGPです。オートスポーツではレース・レポートのグラビアの後に、カラー1ページで3台の初登場マシンの解説記事を載せているます。
「後半期戦に備え、各チームともマシンの“改良”を急いでいたが、ディジョンのガレージに現われモディファイド・マシンを見てみよう」
こうして紹介されるのはマクラーレンM28CとブラバムBT48、そしてアローズA2
です。
「なかでも注目されるのは、“ステージ・ツー”グランド・エフェクト・カーと呼ばれるニュー・アローズA2である。フロント・サスペンションを包む フェアリング・スポイラー・システム、エンジンとギヤボックスに角度をもたせてウイング効果を促進させるなどユニークなシステムとはーー。」
そのユニークなシステムを解説するために5枚の写真を使っています。マクラーレンとブラバムを抑えての主役扱いとはすごい。
以下はフランスGPのレポート記事。
「奇怪なスタイリングに驚くことはない。最新の“進んだ技術”を採用してパドックに現れるのにはもう慣れてきた。それにしてもニュー・マシンをセッティングするには予選の時間ではあまりにも短すぎた。『ラップ毎がこの車についての勉強だ。でもレース前に学び終えるには時間が少なすぎる』とヨッヘン・ マス。」
彼が予選22位、パトレーゼは21位でした。そして本戦もマスが15位、パトレーゼが14位と、続いてフィニッシュ。
結局、シーズンが終わってもA2についての「勉強」は終わりませんでした。アローズA2がポイントを獲得したレースは第10戦のドイツGPと第12戦のオラン ダGPのみで、順位も6位。ドライバーはどちらもヨッヘン・マスです。パトレーゼはA2でポイントを獲得することはできませんでした。
後年書かれた『F1全史1976-1980』の「“ステージ・ツー”グランド・エフェクト・カー」に対する評価は辛辣です。
「弾丸型ノーズ、エンジン/ギヤボックスをはね上げて搭載、そして何ともユニークなスタイルを持つが、空力バランスが悪く失敗に終わる」