2012年5月18日金曜日

サーテースTS20/ルネ・アルヌー/1978年/Racing Models



以前、ヘスケス308Eを購入した「Racing Models」から、また1台、買ってしまいました。サーティースTS20。本体は74ポンドで、送料が10ポンド。計84ポンドです。実際の請求金額は1万474円でした。

サーティースTS20は1978年のマシン。TS19で3シーズン(!)戦ったサーティーズですが、ここでスポーツカーノーズからウィングノーズへと転進します。

1978年7-1号のオートスポーツに紹介記事が載っていました。「F-1最新マシン情報」という記事で、リジェJS-9、ウルフWR5と同じ記事の中で紹介されています。


ちなみにTS20の紹介記事タイトルも、「ウィング・ノーズを採用したサーティーズTS20」です。やっぱりスポーツカーノーズをやめたところがポイントか(笑)。この記事によると、このマシンが投入されたのはモナコGPみたいですね。

記事にはジョン・サーティーズの以下のようなコメントが掲載されています。

「最も大きな変更点は空力デザインだ。オイルクーラーとラジエーターのアレンジを変え、ノーズ先端を細いウエッジ型として、フロント・ウィングを配置した。オイルクーラーはノーズの先端に、ラジエーターはボディの後端に埋め込んだ。前面投影面積の減少と車重配分を変えるためであった。ホイールベース、トレッドもうんと広げられ、サスペンション・ジオメトリーも変更されている。これで最新のグッドイヤーにもフィットして、性能も向上するはずである」
そして、こう言い切っています。

「TS20はそう遠くない時期に、ワールド・チャンピオンシップを狙うことができるだろう。シェイクダウン・テストも順調に終え、デビュー戦に何も問題はないはずだ」
ただし現実は問題だらけでした。モナコGPは予選不通過。最高位はオーストリアGPの6位(ドライバーはブランビラ)。この1ポイントを最後に、チーム・サーティーズはこの年でF1から撤退することになります。

さて、ミニカーのドライバー名を見るとルネ・アルヌーとなっています。この年、マルティニでF1デビューを果たしたアルヌーですが、マルティニが第13戦オランダGPを最後に撤退したため、第15戦アメリカGP、第16戦カナダGPはサーティースから参戦しているのです。というわけで、これはそのどちらかのモデル、ということでしょう。

オートスポーツ1978年11-15号を見ると、イタリアGP(ロニー・ピーターソンが事故死したレースです)のレポートの中に、アルヌーがサーティーズのドライバーになった経緯が書かれていました。「ジェフのパドック情報」というコラムです。


●サーティーズに乗るアルヌー
 ヨーロッパF2チャンピオンのルネ・アルヌーはことし30歳。自分の所属していたマルティニのF-1チームが、グランプリからの引退を発表して以来、その動静が注目されていたが、どうやらシーズン末の残された2レース(アメリカとカナダ)をサーティーズのチームから出場することが決定した。
 ルネ・アルヌーは、オランダGPで負傷したルパート・キーガンの代わりに登場するわけだが、モンツアで重傷を負ったブランビラのほうの穴を誰がうめることになるかについては、まだサーティーズの側から明らかにされていない。
 チーム・サーティーズの今シーズンにおける成績は決して満足のゆくものではないが、アルヌーにしてみれば願ってもないチャンスといえるだろう。これでクォリファイを通過してアメリカかカナダのどちらかでいい成績をあげることが出来れば、来シーズンの見通しも悪くはないはずだ。


この2戦、アルヌーはアメリカGPで完走、カナダGPではリタイアという結果でした。オートスポーツを眺めてみても、予選結果でちょっと触れられている程度ですね。

11列目にはサーティーズTS20に乗るルネ・アルヌーがついたが、彼は最終セッションの中ごろにシケインからとび出し、ステアリング・アームを曲げてしまい、その後はまったく走れなかった(12-1号)※アメリカGP

8列めにはほとんどノートラブルでプラクティスを終えたエンサインN177のデレック・ダリー。そのとなりはサーティーズTS20のルネ・アルヌー。彼はクォリファイ用タイヤの配給は受けられなかったが、無事16番手で予選を通過した。しかし、チームメイトのベッペ・ガビアーニは、また予選を通過できなかった。(12-15号)
※カナダGP

「予選途中で走れなくなった」とか「チームメイトは予選通過できなかった」とかいう文章の裏側に、アルヌーの才能を感じさようとしている筆者の意図が感じられる、なんていうのはうがちすぎでしょうか。

話はそれますが、前に引用した「サーティーズに乗るアルヌー」という小記事の、まとめがなかなか印象的でした。ケガをしてシートをアルヌーに譲らなければならなかったキーガンのコメントがレースの厳しさを感じさせます。

 キーガンはいぜんとしてギプスのお世話になっているが、モンツアにその元気な姿を見せている。病院を退院して間もない彼なのだが、アメリカへも足をのばしての観戦を予定しているらしい。彼はそのへんのところを次のように説明してくれる。「なにしろこの時期には、何はともあれ顔を出していなくちゃ駄目なんだよ。来シーズンへの情報をあれいれ手に入れるためなんだけど、それさえ出来ないんだったら、もうこの世界とはオサラバしたほうがいいだろうね……」若い彼らしい発言に拍手を送ろうではないか。

営業は大事、ということですね。ちなみにこの年、彼は22歳。ただ残念なことに、翌年、キーガンの座るシートはありませんでした。厳しいなあ。