2012年6月1日金曜日
ウイリアムズFW06/アラン・ジョーンズ/1978/ミニチャンプス
「好きなF1マシンを1台だけ挙げろ」といわれたら、個人的にはこのマシンを選ぶかもしれません。ロータス78の成功でみんながグランドエフェクトカーの方向へ進んだ1978年に登場したくさび形のF1マシン。根がひねくれ者なもので。
テールエンダーだったチーム・ウイリアムズがオイルマネーを得て送り込んだニューマシンは、登場したときから好意的に迎えられます。オートスポーツ1978年3-1号の巻頭グラビアより。
「これまでのウィリアムズのマシンの中で最高のデキと思われるFW06で、まったくのブランド・ニュー・マシンである。マシンの特徴は、軽く小さく、シンプルであることで、コンポーネンツの配置もよく考えられている。ドライバーのA.ジョーンズは、今後トライすることは多いが、きっとうまくいくと大張り切りである。」
この号には3ページの解説記事も載っていました。記事はこう始まります。
「フランク・ウイリアムズは“アスベスト”だ。イギリスのレース界では、彼はどんな火焔にあたっても燃え出すことのない・ファイア・プルーフ(不燃性)のスーパーマンと言われている。これまで何度となく挫折し、打ちのめされたが、その度に見事に立ち上がって、またレースに挑む不死身のスーパーマンなのだ。」
今だったら「アスベスト」は褒め言葉に使われませんよね(笑)。
記事では、スポンサーにサウジアラビア航空がついたこと、ニューマシンをデザインした「ことし31歳」というパトリック・ヘッドの人となり、そして「第一印象は非常にシンプルで、実用的なマシンのようだ。そして非常に軽そうに見える」ニューマシンの技術解説が語られます。記事のまとめで筆者はこう書いています。
「F・1グランプリ・サーカスには、スーパー・チーム、すぐれたコンストラクター、そしてそれらより1ランク下の小チーム、さらにプライベート・エントラントがいるわけだが、新しいFW06の完成で、ウイリアムズはいわゆるプライベート・エントラントから小チームへ昇格したことになる。」
実際には、ここからわずか3年で、筆者が言うところの「スーパー・チーム」へと飛躍していくわけです。90年代の、全盛期のウイリアムズしか知らない人にとっては、70年代の様子は想像すらできないかもしれません。でも、本当にここまでは「その他大勢」チームだったんですよ(笑)。
FW06以前のウイリアムズのだめっぷりがわかる一例を1つ。オートスポーツ1976年11-1号オーストリアGPのレポートから。ジャッキー・イクスが離脱した後、ウイリアムズのドライバーシートに収まったクリス・エイモンの意見です。
「ところでエモンだが、エンサインを飛び出した後、イクスと入れ替わるようにウイリアムズ・チームでウイリアムズFW05のテストを行った。そして マシンについて次のように述べている。『ひどいマシンだ。いや本当にひどい。ポストレスウェイトにどこが悪いか伝えようとするが、彼は聞く耳を持っていな いようだ。ヤツの頭は雲の上なんだ』。」
すごいコメントですよね。「ひどいマシンだ。いや本当にひどい」って(笑)。