2012年10月3日水曜日
フェラーリ312T2 6WHEELS/ー/1977/マテル
マテルの「フェラーリ312T2 6WHEELS」です。1977年にテスト走行はしたものの、実戦に投入されなかったテストカーです。
1976年に登場した6輪マシン、タイレルP34は、第5戦のベルギーGPに登場して4位に入賞すると、第6戦で2、3位を占め、第7戦では一気に1位、2位を独占します。今振り返っても衝撃的なデビューですね。
当然、他のチームも6輪への取り組みを始めます。ただタイレルが小型化したのはフロントタイヤ。後輪のサイズがそのままなので、実は投影面積はそんなに小さくならなかったそうです。「なら後輪のほうを4輪にして小さくしたほうが投影面積は小さくなるんじゃね?」と考えたのが、マーチとフェラーリでした。
とはいえコンセプトは違います。マーチは後輪2つを後方に追加する方式。一方、フェラーリは横に足すという方式を取りました。
タイレル、マーチ、フェラーリの6輪車はみんなミニカーとして出ていますので、並べてみます。
シンプルに投影面積を減らすなら、マーチのやり方でしょうが、タイヤを回すシステムが2倍になります。空気抵抗を減らすためだけにそれだけのことをする意味はあるのかという疑問も出てきます。その点、従来のリア・タイヤを二つ横につなげたフェラーリのほうがシンプルです。まあ、その分、タイヤ2個が横にはみ出しているわけで投影面積も増えるんじゃないかという疑問も出てきます。
どちらもその疑問が解消できなかったのが、実戦に投入されなかった理由でしょうね。
オートスポーツ1977年5-15号に、グラビア2ページに加え、「ついに登場したダブル・タイヤのフェラーリ」という1.5ページの記事が載っていました。
「フェラーリよ、お前もか──。このグロテスクなF-1マシンをさらに醜くする権利がお前にはあるのか。時とともに音楽が変わり、ファッションが移ろっていくのと同じで、フォーミュラ・カーの形も時の流れにさからうことはできないようである。」
という“文学的”な文章で始まる記事は、さらにゴッホやシャガールはわかるけれどキリコやダリの絵は「どうもいただけない」と芸術論に進んでいきます。いいなあ、こういうノリ。嫌いじゃありません。
「しかし、いずれ時が過ぎ、次の時代になればこれらの絵も美しい、これこそ現代の美であると大勢の人達が認めるようになると思う。」
「一時代前のあのスリムな、いわゆる“葉巻型”のフォーミュラ・マシンから、現代の6輪車へと流れは大きく変わってきつつあることは事実である。」
「そしてタイレル。今回のフェラーリの6輪車は言ってみればシュール・レアリズムの絵画のように 衆人の理解の範囲から離れてはいるものの、未来を目指した新しいフォーミュラのフォルムではないだろうか。」
残念ながら未来はそちらへは行かなかったわけですが(笑)。いつの時代でも未来予測は難しいです。
オート・スポーツ1977年5-15号の表紙は、77年型のポルシェ935でした。
こちらは表4です。
何の広告か一瞬わからないかもしれません、これはスバルの広告です。世界中の一流メーカーはみんな水平対向エンジンを採用しているよ、という内容。載っているのはスバル以外では、アルファロメオ、ワーゲン、シトロエン、ランチャ、フェラーリ、ポルシェ。この中で今も水平対向エンジンを搭載しているのはポルシェとスバルだけですね。未来はわからないものです。