エーダイのマーチ761Bです。特にドライバーの指定はありませんが、ナンバーとカラーリングからすると、これはイアン・シェクターのマシンですね。
オートスポーツ77年3-15号の表紙(の上半分)がシェクターのマーチ761Bです。
アルゼンチンGPのレースレポートに、簡単なマシン紹介がありました。
「マーチは昨年タイプの古いマシンを持ち込んだが、新顔のふたりのドライバーのために目新しいペイントが施され、新しいスポンサー・ネームがつけられている。」
「マーチ761Bの変更点は、フロント・サスペンションとスタビライザーのレイアウト(ロッキードの新しいツイン・キャリバー・ブレーキを装備するため)である。」
「また、リア・スタビライザーはロータス式のアジャスタブル・システムを採用している。」
ブレーキに関しては、オートスポーツ77年2-15号にこんな記述がありました。マーチ6輪の紹介記事の前半部分です。
「マーチ761は、76年シーズンの終盤にはくわめてコンペティティブなマシンに成長していたが、ふたつの大きな弱点をかかえていた。ひとつは、レース中に左のフロント・タイヤが過熱しやすく、ほかのマシンと比較して、ブレーキの効きが落ちるということだった。」
「77年1月のブラジル・グランプリには、残念ながらマーチの新しい6輪車は出場しないが、その代わり、改造型の761Bが出場するという。このモデルには新しいツイン・キャリバーのブレーキ系、そしてドライバーズ・シートからアジャストできるバリアブル・アンチ・ロールバーが装着されるはずだ。これは、レース序盤の、まだ燃料タンクが満タン状態のとき、左のフロント・タイヤにかかるロードをゆるめて、そのオーバーヒートを防ぐための新しい機構である。このほか、細部に多くの改良が加えられ、全体としてかなりの重量軽減が実現している。」
ただ前年と違い、761Bは「コンペティティブなマシンに成長」はしてくれませんでした。オートスポーツ1977年10-1号のドイツGPのレースレポートに、761Bについてイアン・シェクターのこんな発言が載っています。
「マーチではI.シェクターが1番速く、18位のタイム。プラクティスにはロビン・ハードも姿を見せたが、ヨーロッパでのF-1レースに彼がやってきたのは初めてのことだ。『彼のおかげでセッティングもうまくいった』とイアンは語っており、走るごとにタイムを向上させて、最終セッションでは1分56秒35を出した。しかし、ハードはレース前に帰国してしまい、土曜日の夜に彼が指示したセッティングはめちゃめちゃだった。そのためイアンは『こんなひどい車には来年からもうのらない……』とさえいう始末。」
マーチはこの年かぎりでF1から撤退するので、シェクターの決心は守られることになります。ただシェクター自身も78年はF1のドライバーズシートを獲得できなかったのですが。